キルミオン
王位継承儀式で使用される毒の杯
キルミオンは、フェダス王国の王位継承儀式において中心的な役割を果たす、古の魔術が込められた杯である。純金で作られたこの杯には、複雑な幾何学模様が刻まれており、その縁には七つの宝石が埋め込まれている。
伝統によれば、新たな王となる者は、この杯に注がれた猛毒の液体を一気に飲み干さなければならない。毒は畏き者グレナキアの血液から抽出されたものだと言われ、通常の人間であれば即死するほどの猛毒だが、真の王の資質を持つ者だけがこの試練を乗り越えられるとされる。
儀式の際、杯に注がれる毒は「王の涙」と呼ばれ、その調合法は王家の最高機密とされている。杯を飲み干した後、継承者は一時的に死の淵をさまようことになるが、やがて蘇生し、畏き者グレナキアの恩寵を受けた真の王として目覚めるのだ。
この過酷な儀式の起源は、フェダス建国の時代にまで遡る。初代王が畏き者グレナキアと契約を結び、王国の繁栄と引き換えに、後継者たちにこの試練を課すことを約束したのだという。
キルミオンは、普段は王宮の最も厳重に守られた宝物庫に保管されている。杯を守る者たちは、生涯をかけてその任務に従事し、杯の秘密を墓場まで持っていくことを誓う。
この儀式は、フェダスの人々にとって畏怖と尊敬の対象であり、新たな王の即位を告げる重要な瞬間として、国中で祝われる。しかし、その裏では、儀式の残酷さを疑問視する声も密かに上がっているという。