ルミオス・トラゲディア
畏き者との契約に苦悩する王の悲劇物語
七国期の文豪ゼンタ・ミアルヴァンが著した悲劇作品。畏き者との契約によって王位を得た主人公ルミオスが、自らの出生の秘密と畏き者の呪いに苦しむ姿を描き、人間と畏き者の関係性の複雑さを鋭く問いかける。
ゼンタ・ミアルヴァンは、フェダス王国の宮廷詩人として名を馳せた人物であり、その鋭い洞察力と美しい韻律で知られている。『ルミオス・トラゲディア』は、彼の代表作として、七国の知識人たちに広く読まれ、様々な解釈と議論を呼んでいる。
物語は、ルミオス王子の誕生から始まる。彼の父エルナ王は、畏き者ゼクトラルとの契約により王位を得たが、その代償として「自らの血を引く者に王位を奪われる」という予言を受けていた。恐れおののいたエルナ王は、生まれたばかりの王子を森に捨てるよう命じるが、そこへ畏き者ヴァルタリオが現れ、王子を救う。
ヴァルタリオによって育てられたルミオスは、成長するにつれて並外れた知恵と勇気を身につける。彼は旅の途中、エルナ王の国を訪れ、そこで国を脅かす畏き者サルヴァリュクトの謎を解き明かす。感銘を受けた国民たちは、ルミオスを次の王として推挙する。
しかし、王位に就いたルミオスの前に、突如としてゼクトラルが現れる。ゼクトラルは、ルミオスこそがエルナ王の息子であり、予言通り父から王位を奪った存在だと告げる。さらに、ルミオスがヴァルタリオとの間に交わしていた秘密の契約も明らかになる。その契約とは、「最愛の者の命と引き換えに、国を繁栄させる力を得る」というものだった。
苦悩する王の姿
真実を知ったルミオスは深い苦悩に陥る。彼は父を殺した罪の意識に苛まれると同時に、国の繁栄のために最愛の妻ミアルナを犠牲にしなければならないというジレンマに直面する。ルミオスの苦悩は、人間が畏き者との契約に手を染めることの危うさを象徴している。
悲劇の結末
最終幕、ルミオスは自らの目を潰し、王位を捨てて放浪の旅に出る。彼の旅立ちを見送るミアルナの姿に、観客は人間と畏き者の関係がもたらす悲劇の深さを感じ取る。
『ルミオス・トラゲディア』は、その重厚な主題と美しい言葉遣いで、七国の文学界に大きな影響を与えた。特に、人間と畏き者の契約がもたらす予期せぬ結果や、力を得ることの代償について深く考察している点が高く評価されている。
また、この作品は各地で上演され、その度に新たな解釈が生まれている。アヴィスティアでは、鉱山貴族たちの権力闘争に重ねて演じられることが多く、イシェッドでは自然との共生を説く寓話として受け取られている。