ゼクトラルの仮面劇

砂漠の遊牧民の伝統芸能

ゼクトラルの仮面劇は、グリトリュ砂漠の遊牧民の間で代々伝承される伝統的な演劇形式である。畏き者ゼクトラルにまつわる物語を、精巧な仮面をつけた役者たちが演じる、神秘的かつ芸術性の高い舞台芸術である。

起源は群王期初期にまで遡るとされる。砂漠を徘徊する畏き者ゼクトラルの姿を目撃した遊牧民たちが、その体験を芸能として昇華させたのが始まりだと言われている。

この仮面劇の最大の特徴は、役者たちが身につける精巧な仮面である。これらの仮面は「ゼクトラルの顔」と呼ばれ、砂漠で採取される特殊な鉱物を原料として作られる。仮面職人は畏き者ゼクトラルの末裔とされ、仮面作りの過程で神秘的な儀式を行うという。

演目は大きく分けて「創造劇」「破壊劇」「再生劇」の三部作で構成される。「創造劇」ではゼクトラルによる砂漠の創造が、「破壊劇」では人間との争いが、そして「再生劇」では砂漠と人間の和解が描かれる。各劇は複雑な舞踊と詠唱で進行し、観客を幻想的な世界へと誘う。

上演は通常、満月の夜に行われる。砂丘の頂に設けられた円形劇場で、松明の灯りの中、幻想的な舞台が繰り広げられる。特筆すべきは、上演中しばしば発生する砂嵐である。これは畏き者ゼクトラルの意志の現れとされ、劇の重要な演出要素となっている。

ゼクトラルの仮面劇は、単なる娯楽ではなく、遊牧民たちにとって重要な宗教儀式でもある。上演を通じて畏き者ゼクトラルの意志を知り、来たる年の天候や遊牧のルートを占うのだという。

近年、この仮面劇は砂漠地域を越えて、広く知られるようになってきた。特に、タルヴェイの芸術家たちが、その幻想的な演出に強い関心を示している。一方で、伝統の神聖性を守るべきだとする保守派と、芸術としての発展を望む革新派の間で、その在り方を巡る議論も起きている。